知の3層構造

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入試に役立つメンタル・壁の越え方・作文に強くなる

かつての暗記中心の大学入試(センター試験)から
思考力を問われる大学入試(共通テスト)に変化していることは、皆さんよくわかっていると思います。

一般入試だけでなく、大学生の5割が総合型入試や推薦によって進学を決める時代です。

大学入試の変化に伴い、高校や中学の授業内容もどんどん変化しています。

40年前の入試や授業とは大きく異なるので、
親御さんの中には「わからないから子どもに任せてる」とおっしゃられる方もいます。

私自身も変化についていくのに精一杯で、最新の情報を取り入れるのに必死です。

ただ、変化については入試形式や授業方法が変わったというよりも
身につけるべき本質的な知のあり方が変わったと認識しておく必要があると思います。

そこで今日は、新しい学習指導要領に基づいた知の構造についてお話しします。

まず、知の構造は3層あると思ってください。

知の土台となる1層目は、事実的な知識、つまり「知っている」レベルの知と
個別的なスキル、つまり「できる」レベルの知から成り立ちます。

例えば、「墾田永年私財法は743年のことである」というのは、事実的な知識です。

年代を暗記すれば知識として知っている状態ですよね。
「墾田永年私財法は何年のことですか?」という質問にも答えることができる。

これは、日本史の授業の中で身につけた個別的なスキルとも言えます。

次に、知の2層目です。

2層目は、転移可能な思考の形、つまり「わかる」レベルの知と
複雑なプロセスを踏む「応用できる」レベルの知から成り立ちます。

転移可能な思考の形とは、物事と物事の間のつながりを理解できている、説明できるということです。

社会でいえば、出来事と出来事の間のつながりと言ってもよいでしょう。

例えば、「墾田永年私財法はなぜ作られたのか?」「墾田永年私財法がどのような影響を及ぼしたのか?」について

他の出来事とのつながりを踏まえて説明できるということです。

また「応用できる」レベルの知とは、
「墾田永年私財法」がつくられた時代における社会変化の様子や
その時代の特徴を事実的な知だけでなく、
自分が関連づけた知から推論したり、考察したりすることです。

歴史の事実をただ受け入れるだけでなく、
いろんな立場から評価したり、吟味することが重要といえます。

1層目の知と比べるとむずかしく感じると思います。

1層目の知が成績表でいう「知識・技能」だとしたら
2層目〜3層目の知は「思考力・判断力・表現力」にあたります。
そして、最後が3層目の知ですね。

3層目は、原理を理解し一般化して「使える」レベルの知です。

例えば、「墾田永年私財法」の知識って社会に出た後に何の役に立ちますか?

入試のために年代を暗記していただけでは、使い道がないでしょう。

でも、当時の時代の社会的背景が今の時代にどうつながるのか?といった意味を考え、
社会の授業以外の場面でも使えることができたらかっこいいですよね。

これは「班田収授法(生きている間だけ口分田を与え、死ねば国家が収める法)」や
「三世一身法(開墾した土地の三代にわたる保有を認める法)」や
「荘園の成立(貴族や寺社の私的な所有地)」などの知識と
どんな風に「墾田永年私財法」をつなげるか
思考力が試されています。

例えば、こんな問いにどう答えるか?

あなたは歴史館の案内役です。
下の1〜4の出来事を古い順に並べかえ、
来客者に出来事の背景となる具体的な事実とその流れを踏まえて
因果関係を説明する必要があります。

あなたならどんな説明をするか文章で表現してみましょう。

1.三世一身法

2.荘園の成立

3.墾田永年私財法

4.班田収授法

この問題に実際に答える必要はありません。
でも、暗記した知識をただ答える一問一答形式だけでは
「使えるレベルの知」にはならないことがわかると思います。

テストのためだけに大事な青春時代を勉強についやすのではなく、
「考えること」を意識して、社会に出てからも自分が使える知を身につけていってほしいと思います。


伊藤万莉(いとう まり)

4月から立命館大学大学院の文学研究科 教育人間学に進む。桑名高校理数科、立命館大学(文学部< 人間研究学域>)卒業。
ひと言われたら10考える。高校時代は陸上競技をこよなく愛し、
近い将来は南極に行って「皇帝ペンギン」さまにご挨拶するのが夢。
最近は、生徒とどういう関わりがベストなのか探求中。

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