オンライン授業と対面授業、何が違うのか、この違いが言葉にならなくて、ずっと悩んでいました。
オンラインも対面も言葉のやりとりです。ですが、対面はそれだけじゃない。おたがいの文脈の共有、立ち振る舞い、言いよどみ・・おたがいが全体で行われるものです。
そう考えるとオンラインは液晶画面、一方通行、限定的です。講師から流れるのは言葉。場合によっては速く、追いつくのに必死です、こっちは文脈の共有どころではない。自分で考えることを置き残していきます。思いついたり、整理したり、考える間(ま)というものが なくなる気がします。
こうなっては覚えるしかない、暗記に頼る、それは数列や確率が公式を覚えただけではうまくいかないのと同じです。ああ失敗!後でわかります。いざという時、使えない。覚えたはずが、思い出せない。最初からやり直すしかない。塾長の経験です。
そう考えてみると、対面とは「聞き合う」営みです。相手の言葉と、そこにある大事なポイントを一つひとつ吟味していく道のりです。
オンラインは言葉に耳を傾けるだけでも済みます、対面は、そうはいかない。「なるほど!」「そうですね」と、相手の言葉を確かめ、「ここまでわかりますよ」と自分の言葉にして返す過程が必要です。何も言わなければ、相手もどうしていいか困るからです。
「どうしてこの答えなんです?」と尋ねることもあるし、「なんで、こう考えたら×なんですか?」と共に悩む、「さすが!」と気遣うとか、黙ったまま「間」を持つ、これは すべて記憶定着の営みです。
対面には、変わる期待があります。こちらの言葉で相手が変わったり、相手の言葉によって自分が変わったりします。ひょっとしたら対話する前に、向こうもこっちも変わりうることをどこかで期待しているかもしれない。これはオンラインには少ない気がします。3者懇談をオンラインでやろうとは思えないからです
耳を澄ませてじっと聞いてくれる、聞かれているから話せる、問われるから考える、知識を融合させたり、別解に気づいたり、お互いの世界が広がる。
これって、問題を考えるときの試行錯誤と同じです。複数の対面が一人の自問自答になるだけですから。入試問題を作る先生も、同じ道のりを歩いていて、その足跡をたどれるかどうかを見るんです。ああ、この子わかってるな、苦労してるなって。
対面には「立ち止まり」があります。立ち止まりによって「そういうことか!」へ変わる。このしんどい過程を踏み慣れてないと、入試でいざという時に一歩が踏み出せない、融合が起きない、立ち尽くすだけで終わる。
定期テストでも入試でも、点数がのびる子の頭の中で何が起きているかといえば、知識の融合です。「このやり方でやってみよう」「ちがう考え方で解けるかな?」と立ち止まる。失敗しても、失敗しても、組み合わせを考える。5回、10回くり返して正解にたどり着く。入試に強くなるには、試行錯誤の訓練を増やしていくことです。
じゃあ、だれかの試行錯誤を紙に書いて片っぱしから覚えればいいな、なんて思いますよね。ですが、全網羅に膨大な時間がかかる、当てはめに失敗する恐れもある、当てはまったとしても、やったことがないから、できるか不安、入試に間に合いません。
覚えるより知識融合の訓練をするほうが、どう考えても実践的です。やればできるという自信に満ちていますから勢いが違います。それはオンライン授業でできるか?というと できない気がします。今のところ、訓練する場はTheJukuにしかありません。