「厳しく叱る」だけでは解決しないです。どうすればいいのでしょうか。
友達に向かって「死ね」と言ったり中指を立てるジェスチャーをしたりする、集団で特定の子どもを執拗にからかう……。
親としては「わが子に限ってするはずはない」と思いたい言動です。
もしわが子がこんな「まさか」の言動をした場合、親はそのことをどのように捉え、わが子に関わっていけばいいのでしょうか。
まとめ
・不適切な言動の本質的な原因は○○○○○の○○
・不適切な言動をする子は、「いじめる側」にも「いじめられる側」にもなるリスクがある
・不適切な言動を叱るだけでは○○○○○○にしかならない
・子どもの話を聞く時は○○○のママを演じるのがコツ
「まさか」の言動をする子は「悪い子」?
わが子が友達に向かって暴言を吐いたり、集団で嫌がらせをしたりしていると知ったら、親はショックです。低学年のうちからこんなことを言ったりやったりしてしまうなんて、うちの子はこの先どうなってしまうのか、いつの間に「悪い子」になってしまったのか?などと感じてしまうかもしれません。
一線を越えた言動は、『子どもからのSOS』
子どもたちは一線を越えて行動したいと思っているのではなく、あることが原因でこうした行動に出てしまいます。
一線を越えた言動は大人の目からは「すごく悪いこと」。
だとしても、低学年の場合、その言動に対して大人と同じ感覚を持っているわけではないです。
たしかに『死ね』などという言葉は絶対に人に言ってはいけない言葉です。また集団で嫌がらせもしてはいけないことです。
ですが、低学年の場合はそうした言動がそこまでいけないことと理解できておらず、気軽に感情の勢いでやってしまっているわけですね。
とはいえ、許されない言動であることは確かなので、大人として真剣に「許されないことだ」と伝えていく必要があります。一線を越える言動をしたわが子に対し、親はどのように接していけばよいのでしょう。原因はどこにあるのでしょう。
原因はその日の出来事ではない
子どもが一線を越えた言動をした場合、親は「なぜそんなことを言ったのか」「なぜそんなことをやったのか」と「今まさにこの瞬間」の状況分析をしがちです。
が、そうではなく、時間を巻きもどして根本的な原因を探る必要があります。
友達とケンカをしてカッとしたことが『死ね』と言った直接的な原因かもしれません。でも、その原因はその日の出来事だけでなく、すでに以前からその子の中にくすぶっているんです。
以前から子どもの中にあった不適切な言動の原因は感情の蓄積もありますが、総じていえば「自己肯定感の低さ」です。 『自分は自分でOK』と思えていない、つまり自己肯定感の低さからくる不安定さがあるということです。
自己肯定感が低いことで、どのような言動に出るか。言語能力が高い子は言葉に出るケースが多く、そうでない場合は行動に出たりします。
学校や学童では集団心理が働きやすい
一線を越えた言動は、それ自体が相手を傷つけたり、人に迷惑をかけたりするため、集団の中ではこうした言動がさらに大きくなります。
学校や学童では集団心理が働きやすいことが特徴です。誰かが1人をターゲットにしてインパクトの強い言葉をかけたり、追いかけ回すような行動をとり始めたりすると、それを見て刺激を受けた他の子も乗ってきてしまうものです。
また、情緒不安定で余裕のない子は「いじめる側」だけでなく「いじめられる側」にもなるリスクがあります。
「いじめる側はいじめやすそうな子を探します。いじめやすそうな子とは、嫌がらせで揺さぶりやすい子なので、やはり情緒不安定な子がターゲットになります」
『集団でいじめが起きるのは何歳ごろからですか?』と聞かれることがありますが、いじめに年齢は関係ありません。未就学児であっても、集団の中に情緒不安定な子がいれば起きてしまいます。
情緒不安定な子は心が満たされないイライラから、人を攻撃しようとします。特にいじめやすそうな子をターゲットにして、相手を傷つける言葉をかけたり行動に出たりします。
そうした中で、言葉で人を傷つける場合は、『バカ』よりも『死ね』など、よりインパクトが強い言葉を選ぶようになっていきます。
年齢が上だったり情緒が安定している子は自分が満たされているので、人を攻撃しませんし、集団に乗らず、むしろ止めに入ることができるかもしれません。
「強く叱ったら言わなくなった」=「成長」ではない
わが子の不適切な言動にはどのように対応していけばよいのでしょう。まず、その言動が不適切であることを、そのつど真剣に伝えます。
ですが、叱る際に『そんなことを言うあなたはダメな人間だ』などとその子自身を否定してしまうと、さらに自己肯定感を下げてしまうことになります。
『その言葉は人を深く傷つけるから言ってはダメなの』とその行為がなぜダメなのかをしっかり伝えながら、行為を叱ります」
強く叱った結果、子どもがその言動をとらなくなったからといって、単純に「成長」と捉えられないこともあります。
『死ねと言ってはいけない』と真剣に伝えた結果、同じことを人に言わなくなったら、『この子はちゃんと理解できたんだ。もう大丈夫』と思いがちですが、それだけで根本的な子どもの成長に結びつくということはなく、他の不適切な言動にはけ口を移すケースが多いです。
同じことを言うと大人に叱られてしまうので、今度はバレないようにこっそり友達に嫌がらせをしたりするなど、水面下に潜る形で不適切な言動をとるようになり、さらに分かりにくくなってしまいます。つまり不適切な行為を叱ることは必要ですが、それだけではもぐらたたきにしかならないということです」
ゲームをしていて、「もう終わりにしよう」と言うとダダをこねる子
大事なのは、不適切な言動を叱るだけでなく、同時並行でおおもとの原因である自己肯定感を引き上げていく取り組みです。そのためには、わが子に日ごろからしっかり愛情を伝えられているかを見直してみましょう。
わが子への愛情はたっぷりあるという親がほとんどだと思います。でも、重要なのはそれがしっかり子どもに伝わっているかです。『愛情』は抽象的で分かりにくいものなので、それを伝えるために具体的にどうするかが大事です。
子どもの話を聞くことで、単に話を聞くだけでなく、子どもの気持ちを共感してくみ取る聞き方がポイントです。
特別なことは必要なく、話にうなずいたり、「なるほどね~」などと相づちを打ったりするので十分です。子どもが「今日は暑かった~」と言えば「そうだね、暑かったよね」とオウムのように返す。
とても簡単なことですが、忙しい毎日の中でこうして『聞く』のは意外と難しく、気付くと親がしゃべってしまうことのほうが多いと思います。ここは親の頑張りどころです。おやつタイムや夕食タイムは『飲み屋のママ』を演じるつもりで話をたくさん聞き、うなずいてあげてください。
『なるほどね』『大変だったね』『うれしかったね』と気持ちに共感してもらうと、『自分は認められている』と感じられるので子どもは安定してきます」
最近ちょっと落ち着きがないなと思うような時は、親からの『口だし』も有効。
「子どもが話すのを待つのではなく、親から先に『今日の給食は好物のカレーだったね』『あなたが好きなアイス買っておいたよ』などといった言葉がけをすると、子どもは『ママは自分のことを考えてくれている』と感じることができます」
「子どもができている時に承認する」のもポイント
「子どもがちゃんと過ごせている時は安心して家事や仕事を進め、困ったことをし始めると家事や仕事の手を止めて叱るというパターンが多いと思います。でもなるべくなら、子どもがちゃんと過ごせている時に『集中して本を読んでいるね』などと、できていることを承認するといいでしょう。
親子で一緒にトランプやボードゲームなどをするのもおすすめです。 ゲーム中は特に子どもを承認する声掛けなどはしないと思いますが、子どもは『大人に時間を使ってもらっている』=『愛されている』と感じます。
ただし、低学年だと『もうゲームを終わりにしよう』と言うと、『嫌だ、もっとやりたい』などとダダをこねてしまう子もいます。ここで『嫌だ、まだやりたい』『そんなわがまま言うなら、もう遊んであげない!』などと親子ゲンカになってしまうと、せっかく親子でゲームをして情緒にプラスの作用をしたものが、マイナスになってしまいます。
ゲームの終わりにグズグズしてしまうタイプの子の場合は、事前に『これが最後の1回ね』などと予告をし、子どもが気持ちに区切りをつけやすくするのがコツです
わが子の話を聞いていくと早いと、数週間で効果が表れます
具体的には、自分から宿題をするようになったり、きょうだいにちょっかいを出さなくなったり、ズルズル休んでばかりいた習い事にちゃんと行くようになったり、といった変化が出てきます。
家は学校や学童とは違うプライベートな場所なので子どもなりにリラックスもしています。家でダラダラするのはリラックスしている証拠なので、リラックスしているなりに親の指示に聞く耳を持てているか、家のルールを守れているかという視点で見るといいでしょう。
さらに自己肯定感がしっかり上がってくると『笑顔が増える』『親との会話量が増える』『友達と仲良く遊ぶようになる』など、人との関わりが以前より増えて円滑になることが多いです」
同じように育てても問題のない子もいれば、問題行動を起こす子も
親の中には「愛情をちゃんと伝えられなかった私が悪かったのかしら」などと自分を責めるお母さんもいるかもしれませんが、こればかりは親のせいではないです。
親が頑張って子育てをしても問題行動を起こす子もいれば、放っておいても問題のない子もいます。また、同じように育てていても上の子は問題ないのに、下の子は問題行動を起こすケースもあります。要は子どもによってタイプがまったく違うということです。
子どもを車に例えるならば、あまりガソリンのいらないエコカータイプの子から、ハイオクを満タンで入れてもすぐに空っぽになってしまう、大型車タイプの子までさまざまです。
ただし、親はわが子がどのタイプなのかは最初から分かりません。車の運転は、エンストしたり、急なカーブを曲がりきれずにぶつけたりと、いろんな経験をして車の個性を理解することで、慣れていきます。子育ても同じ。何度も失敗を経験することで子どもの個性を知り、調整していくものです。そういう意味でも何人子育てをしようとも親はいつも初心者です。
エコカータイプの子はもちろん育てやすいので、よい子に育つはず。でも、ハイオクのガソリンをたくさん必要とする子は、器が大きいということ。低学年のうちに、子どもがSOSを出してくれたのは、調整のタイミングを手にできたということでラッキーなことです。大型車ゆえに不具合の出方もちょっと派手で驚いたかもしれないですね。ここでしっかり調整できれば大丈夫。将来を楽しみに子育てしましょう。
まとめ
・不適切な言動の本質的な原因は自己肯定感の低さ
・不適切な言動をする子は、「いじめる側」にも「いじめられる側」にもなるリスクがある
・不適切な言動を叱るだけではもぐらたたきにしかならない
・子どもの話を聞く時は飲み屋のママを演じるのがコツ