4歳児、子どもは思ったように育たない

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早く!早く!、何してんの!しっかりしなさいよ!
ごはんが早く食べられない、着替えが1人でうまくできない……。
子育てをしていると、子どもの「できない」が目につきます。

「子どもは思ったように育たない・・」そうとわかっていても、そんなわが子の姿を見てイライラしませんか?
共働きのご家庭は、早くからできることを増やそうと育ちを急がせています。

育て急いでしまうと、子どもの「できないこと」にばかり目が向き、本来、その年齢で大切にすべき成長を見逃してしまいます。各年齢で大切にすべき成長とは何なのでしょう。忙しい毎日の中でも「ここだけは押さえておきたい」ポイントが発達段階に応じてわかれば うれしいですよね。

「育て急ぐ」とは、できるだけ早くから子どもの「できること」を増やそうと親ががんばることです
ですが、子育てにおいて、本当に大事なのは、他の子よりも早くに何かができるようにすることではなく、子どもの日常に向き合えること。そのための余力を帰宅後に残しておく、そんなゆとりをつくっておくことが、自分で考える子に育てる、大切な親の頑張りどころだと思います。

今、仕事をがんばりながら、子どもにはできるだけのことをしたいと高い意識で子育てをしている人は多いです。仕事でも育児でも、周囲に後れを取るまいと一生懸命。そんな中、仕事と比べて育児がうまくいっていないのではと焦ったり、日々の忙しさの中で子どもの成長や学びに目配りができていないのではと不安を感じたりしています。そんな焦りや不安から、『立派な子どもに育てなければ』という意識が生まれるようです」

 そこで大きいのは「ゆとりある働き方」。ある保育園では、かつて閉園を18時から20時15分にすることで、忙しく働く親のニーズに対応していました。今ではリモートワークが浸透し、いったん18時ごろに迎えに来られるようにはなったものの、家で持ち帰った仕事の続きをするなど、ますます余裕がなくなっている人も見られます。

 そんな状況下で、乳幼児期の子育てで、「心にとどめてほしい」のが、「うまくできなかった経験こそ、宝」「0~6歳の時期に大切に育てられた子どもは、人を大切にできる大人になる」ということです。

 常に先回りして育ちを急ぐと、子どもの「できないこと」にばかり目が向いてしまい、本来、その年齢で大切にすべき成長を見逃してしまう。子どもの0~1歳、2~3歳、4~6歳という発達段階に応じて、子どもとの関わりで忙しい日々の中でも「ここだけは押さえておきたい」ポイントがあります

0~1歳の乳児期には、「食事と睡眠を中心に生活サイクルを整えることが重要」です

 「保育園では、0~1歳児の保育は8割が『生活サイクルづくり』です。睡眠のリズムをつくってあげることは、親ができる最初のプレゼント。大人の都合で寝起きする時間を変えることはなるべくせず、「7時起床と21時就寝」のような一定のリズムを目指します。この時期に睡眠のリズムをつくっておけば、自律神経がしっかり働くようになり、思春期以降に少々夜更かしすることがあっても、睡眠リズムを取り戻せるようになるといわれています」

 食事が重要なのは「0~1歳が味覚の形成にも大事な時期だからと言われています。

この時期に、味の濃いファストフードやスナック菓子、チョコレート菓子など刺激の強いものを食べさせると、味覚が育ちません。かみつぶしたり、飲み込むのが難しく、脂質や塩分の取り過ぎになる恐れもあります。幼児期に野菜が嫌いになるのは、0~1歳のときに、野菜本来の苦みなどを体験していないことも一因。この時期は味付けはしないか、ごく薄くにとどめ、素材そのものを味わうことを大切にします。

 また、食べたもので体はつくられるため、食事は健康にもダイレクトに関わります。
 「いつも手作りにこだわる必要もありません。出来合いのものでもちゃんと親の愛情は伝わります。大切にしたいのは、家族で食卓を囲むこと。食事をしながら一日の出来事を話し合うことが、豊かな心の育みにつながります。

2~3歳になると、「イヤイヤ期」
に代表されるように、だんだんと親の言うとおりにはいかなくなってきます
「自分で、自分で」と言う割にはちゃんとできなかったりして、親も手を焼く時期です。でも、「それは自我が育っているからで、この時期にはやりたがることがぜんぜんできなくても、『自分でやりたい』という、子どもの自尊心を大事にしてあげてほしいです。

 「雨が降っているわけでもないのに長靴で行きたいとか、大人が首をかしげたくなることでも、『今、あなたはこうしたいのね』と気持ちを受け止めて、満足するまでそれをやらせてあげましょう。すると、子どもは自分が『大事にされている』『尊重されている』と感じることができます。その経験があってこそ、信頼に足る大人になれるのです」

この時期には、友達との関わりにも成長が見られます
 「友達に興味が出てきて、友達のやっている遊びが気になり、一緒に遊びたいと思うようになります。でも、まだ言葉でうまくコミュニケーションが取れないので、おもちゃの取り合いなどが起こります。しかし、親に尊重されている子は、自分もこのおもちゃを使いたいことを受け止められているので、その後、友達も使いたいんだ、という他者の事情が分かるようになり、思いやりが持てるようになります。

4~6歳になると、友達の存在がどんどん大きくなるため、「友達との関係を見守ることが大事になります

4歳以降は、大人に褒められるよりも、友達に『××ちゃん、すごいね』『○○くん、かっこいいね』と言われることにずっと価値を感じるようになります。保育園でも、竹馬に乗れる子がコツを友達に教えてあげて、その子が乗れるようになると、わがことのように喜ぶ姿が見られたりします。幼児期の後半は、そうした友達と濃密に過ごす時間が子どもの成長を促し、力になっていきます。

そこで、親の取るべき態度は、「友達と一緒にいたい」「友達みたいにやりたい」という思いを尊重してあげること。

 

週末は家族の予定もあるかもしれませんが、友達と遊びたがるときは、先方の親御さんと相談して、遊ぶ日を設定してあげたいですね」

このように子どもの意思に基づいて予定を立て、その日を楽しみに待つことには、「見通す力」がつく効果もあります。

 カレンダーに丸をつけて、『この日に遊ぶ約束をしたよ』と話せば、子どもは『あと2回寝たら、その日が来る』などと、見通しを持つことができます。そして、本当に遊べる日がやって来るという経験を重ねることで、子どもは今すぐではなくても我慢できる子になっていきます。

 また、家族でどこかへ行く、何かをするというときには、『お母さんはこうしたいと思うけど、あなたはどう思う?』と、子どもを一人前と見なして、意見を聞き、それを尊重してあげることも、4~6歳の時期には大切なこと。一方、親の都合で子どもの要求に応えられないときや子どもにしてほしいことがあるときは、「その理由をしっかり説明して」とアドバイスします。

 「朝急いでいるときには、『たくさんのお客さんがお母さんを待っているから、時計の針が8を指したら家を出るよ』といった具合です。子どもは理由が分かって納得すれば、ちゃんと行動に移します。歯みがきなどの習慣づけも理由を説明したほうが効果があります。

親はどうしても子どもが失敗したり、悲しい思いをしたりしないように『転ばぬ先の杖』になろうとしてしまいがちです。ですけれども0~6歳までの子どもには、親が先回りをせず、たくさん失敗をさせて、失敗を乗り越える力を身に付けさせることが大切です。

 

保育園の運動会でリレーをすると、負けたチームのほうがその後必ず伸びます。何がダメだったか振り返りをしながら、励まし合って、次の機会に生かしていく姿が見られます。また、『失敗したけど、○○くんはがんばったよね』と言ってくれる仲間の存在は、子どもを成長させます。子どもは案外たくましいもの。今はできないことがあっても、この子は今後伸びていけると信じる――もっと子どもを信用してもいいです。

 逆に、うまくいった経験しかないと、失敗に対する耐性力が身に付かず、常に『自分はできる』と虚勢を張って、初めての経験を前に不安でいっぱいになってしまう。そして、できなかったときに自分は価値がない人間だと思いがちです。子どもの成長の芽を摘まないためにも、『子どもに失敗させないようにがんばる』ことをやめましょう。とくに子どもの失敗は、決して親の失点ではないこともぜひ心にとどめておいてほしいです。

 親も子どもに失敗した姿を見せながら、『お母さんもがんばっているけど、あなたもがんばっているよね』と、幼い頃からでも家族で励まし合って前に進んでほしい。それが家族というもの。そして子どもの一番の願いは、お母さんやお父さんが笑っていること。そのためにも、少しゆとりを持つことも忘れないでほしいと思います」

将来の自立を考えて、ゆとりを持った子育てをするにはどうしたらいいか、ご一緒に考えます。→ 「東大準備室」10月開講予定です。