個別最適化学習

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 ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・J・ヘックマン教授によると、質の高い幼児教育を受けた子供たちの将来の収入や生活が恵まれているのは、幼児期に獲得した非認知スキルにあることがわかっています。

 認知スキルはテストで測れる能力です。これに対して非認知スキルはそれ以外のものです。言い換えたら、認知スキルは過去の経験値、非認知スキルは未来の潜在的な力でもあります。認知スキルの例はChatGPTに代表される生成AIです。

 確かに生成AIは大量のデータから特徴やパターンを学習し、新しいデータを作り出します。ですけれども生成AIが答えてくれるのは、過去に積み上げてきた経験値から抽出されたものです。これから先、何が起こるかは、生成AIではわかりません。それに今後、認知スキル中心の教育は生成AIに置き換えられます。
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 最近、非認知スキルの土台が築けないまま過ごしている子供たちが増えてきました。その背景には、核家族化によって人間関係が希薄になり、自然体験・外遊びの減少などでリアル体験が減少してきたからです。日本の教育も過去の経験値による認知スキルが中心でしたので、非認知スキルが育っていない。
 
 その結果、日本の土壌からは日本の技術を世界に引っ張り上げるような、「これはいけるぞ」という未来の“目利き”を育てることができない。わかったことは、日本経済衰退の背景には、認知スキルに依存し、前例踏襲主義で、きたこれまでのやり方が限界にきていることです。今、教育に何が必要かといえば、タブレットをそろえたり、学習アプリを活用することではなく、生成AIにはできないこと、これから先のことをどう考えるか?という非認知スキルに関わることです。

 日本の教育が育んできたのは、認知スキルに優れた人材だった。それだけですと生成AIに置き換えられてしまう、なぜ日本では非認知スキルが育たなかったのか。それは、受験や試験というものに対する「公平性」という呪縛です。点数で合格・不合格を決めるのは公平である一方、点数化できない非認知スキルは受け入れられづらいという問題がありました。

 私たち親世代は、そうした「公平性」を重んじた教育を受けてきたため、認知スキルという目に見える価値を測ることにしか慣れていません。しかし、今の子供たち世代では、新しい学習指導要領にも記されているように、変化の速い、予測困難な時代を生きて行くために、これまでの知識・技能という認知スキルに加えて、自ら課題を見付け、自ら学び、考え、判断して行動できる力、つまり非認知スキルを身に付けていく必要があるわけです。

 これは少しずつ入試にも反映されていて、自分なりの考えを問われたり、新しいアイデアを求められたりといった「正解のない」問題、小論文と面接が増えています。今こそ、これまでの教育に対する価値観を問い直し、アップデートすべき時といえるんです。

 非認知スキルは「教える」授業では身に付きません。むしろ、家庭で周りの人々との関わりや日常の体験を通じて無意識に身に付くものです。これを私どもは「体験の翻訳」と命名しました。自分の体験を自分の言葉にすることです。

 これはAIやChatGPTや、映像授業やアプリを見るだけでは決して身に付かない、予備校や個別指導の塾でも「教わる」だけでは絶対に身に付かない、自分の言葉にする国語力です。

 国語といっても、自由気ままに小説を読むのとは違います。TheJukuの考える国語とは、相手の心情を読み解く、それを一段上の考え方レベルに昇華させる、自分の言葉にする、表現する、課題に適切に対応する、解決する、といった表現力が中心です。だからこそ「体験の翻訳」を補うものとしてつくりたいというのが、今回「やさしい東大入門 国語プログラム」を新設した背景です。

 いうまでもなく、TheJukuの本業は、生徒に中学・高校・大学受験で志望校に合格してもらうことです。なぜ、非認知スキルの育成を小学生から始めるかといえば、間違いなく入試で測られる認知スキルを伸ばすためです。ですが、始める理由は、けっしてそれだけではありません。合格した後も、その先に続く長い人生を、自分の強みを生かし、やりたいことを見つけて主体的に生きていってほしい。そのために、この「体験の翻訳」は避けて通ることのできない不可欠なものだからです。

 「やさしい東大入門 国語プログラム」は、いわゆる一問一答形式ではなく、扱うテーマはほとんどが“正解のない問題”です。子供たちが今もっている知識や経験をベースに、コミュニケーションを通じてさまざまな見方があることを知り、大人も子供も一緒に意見を出し合いながら考えをまとめていく、その題材として、まず東大の入試国語を使う、東大がどんな設問を発し、それにどう答えるか、もっと違う設問があるんじゃないか、それにどう答えるかを考えるプログラムです。

 「非認知スキル教育プログラム」の教材。4年で好奇心を引き出すテーマで自由な発想を楽しみ、中学で入試にも対応できるテーマで思考力も養いたい。ご両親がお子さまの勉強を見るとなると、どうしても「ここ模範解答と違うよ」とか、「もっと丁寧に答えなさい」といった「ダメ出し」になりがちですが、そもそもお子さまとは「体験」が違うので「翻訳」も異なるんです。

 正解がないので、子供の意見を聞いて、「へー、そんな面白い考え方ができるのか」などと大人のほうが感心させられることもあります。ですから親は、子供の考えを頭から否定せず、認めてあげる。子供は認められれば自信を付け、もっと考えを深めたい、そのためにもっと知りたい、いろんな体験がしたいと思うようになります。こうした過程で、非認知スキルが育まれていくはずです。

 TheJukuの特徴は「個別最適化」です。子供は「今生きているこの瞬間が、自分にとって幸福だ」と感じられる環境があれば、自分の人生を歩きやすくできるのです。それは、いま自分が何を考え、どうしたいかを言葉にすること、それを忖度なしに相手に伝えられること、まさに自由です。ところが、その子の価値観の軸が、認知スキルで測られる点数と順位だけだと、大半は自信をなくし、潰れてしまいます。

 合格する子には2つのパターンがあります。1つは「どうしてもこの学校に行きたい」という思いが強く、自分で勉強に向かう子。つまり、主体性や自ら考える力といった非認知スキルがある子です。もうひとつは、親の「この学校に行ってほしい」という意向に沿って勉強する子です。

 親の言うとおりに頑張って合格できたとしても、いつまでも親が成績や点数だけで評価し続ければ、多くの子供は挫折感しか感じられなくなります。「志望校に合格したのだから、後は伸び伸びやりなさい」と親が手を放せれば、子供は非認知スキルをぐんぐん伸ばしていけるのに、わが子が合格できたからとさらに期待し、「東大か医学部に行きなさい」「そのために塾に行きなさい」などと干渉し続けるとおかしなことになる。せっかく子供が良い環境を得たのに、親がそれを台無しにしてしまうこともあります。

 四日市で25年、塾をさせていただいて、子供が親のアクセサリー感覚になってしまっている親子関係も少なくないです。思春期における非認知スキルの育成には、親子関係はとても重要ですね。非認知スキルが育つカギは「子供の話を聞くこと」、子供の成長に何がもっとも大切かといえば「心理的安全性」です。親は無条件に自分の味方をしてくれる、最後は受け入れてくれるという絶対的な信頼感があれば、子供は順調に育ちます。

 認知スキルだけに注目してしまうと、100点満点のテストの、間違ったところや出来ていないところをどうやって埋めるかという発想になりがちです。ところが、このプログラムには正解がないので、「うちの子はこんな発想をするのか」と、親の想像を超えるような新たな一面が見えてくることがあります。そうしたコミュニケーションを通じて、「そういう考えもあるね」と親が子供を認める場面が増え、子供が安心して何でも言えるような信頼関係が築かれることを期待しています。

 小学生というのは、親の価値観がすべてだった幼少期までとは違い、自分なりの価値観が少しずつ形成されていく段階です。このたび、TheJukuが提供する「やさしい東大国語プログラム」では、そうした成長段階において、子供が自分の価値観を親に受け入れてもらえるきっかけになればと思います。

 そして、保護者の方には、このプログラムを通じて、点数や偏差値にはダイレクトに現れないお子さんの個性や強みに気付き、その成長を子育ての道しるべにしていただけたら幸いと願っています。