わがままな大男

庭の広い大男のやしきがありました。やしきは子供たちの遊び場になっていました。わがままな大男は、子供たちを追い出すと、庭をへいで囲ってしまいました。春になったのに、子供たちが来ないため、大男のやしきの庭は冬のままでした。ある朝、大男は小鳥のさえずりを耳にし、庭をながめると、子供たちが遊んでいました。庭のすみはまだ冬のままで、そこに小さな男の子がいて、枝に手をのばしていますが、とどかず泣いてしまいました。大男は自分の庭に春が来なかったわけがわかり、優しい気持ちになってきました。大男は男の子を木の枝にのせてやりました。すると、庭に花が咲き、小鳥のさえずりも聞こえてきました。男の子は大男のほおにキスをしました。大男はへいをとりこわし、子供たちと日暮れまで遊ぶようになったのです。けれど、大男にキスをした男の子はあれから一度もあらわれません。大男は男の子に会いたくて、探していました。しかし、だれも男の子を知らず、やがて大男はおじいさんになりました。ある冬の朝、あの時の男の子が庭のすみに立っていました。男の子は「天の国にある私の庭へあなたをご案内しましょう」と言いました。この日、子供たちが遊びに来ると、大男はやすらかな顔で亡くなっていました。