ぽかぽかとあたたかい、春の昼下がり。
やわらかい風がふいて、庭の梅の木がふわりとゆれました。
その木の下で、白い子犬のリュウがのんびりお昼ねをしていました。
すると、頭の上から小さな声がしました。
「ねえ、リュウさん。今日はとてもいい天気ね。」
リュウはびっくりして目をぱちっと開けました。
見上げると、梅の花がにこにこしていました。

「えっ? 花がしゃべったの?」
梅の花は、やさしくゆれながら言いました。
「そうよ。こんな気持ちのいい日は、ついおしゃべりしたくなるの。」
リュウはしっぽをふりふりしながら言いました。
「ぼくね、さっきまでお昼ねしてたんだ。
とってもあったかくて、いい夢を見てたよ。」
「どんな夢だったの?」と梅の花。
「ぼくが大きな草原を走っててね、
風といっしょにどこまでも走る夢!」
梅の花はくすっと笑いました。
「それは楽しそうね。
でもね、リュウ。あなたがここでお昼ねしていると、
わたしもちょっと幸せなの。」
「どうして?」
「だってね、あなたが気持ちよさそうにしていると、
春がちゃんと来たんだなって思えるから。」
リュウは少し考えてから言いました。
「じゃあ、ぼくも幸せだよ。
だって、ぼくの上にはこんなきれいな花があるんだもん。」
風がそよっとふきました。
梅の花びらが、ひらひらと空から落ちてきます。
その花びらが、リュウの鼻の上にふわっと乗りました。
リュウはくすぐったくて、
「くしゅん!」
とちっちゃなくしゃみ。
梅の花はゆらゆら笑います。
「ふふふ。春って、なんだか楽しいわね。」
リュウはまたごろんと横になりました。
「うん。ぼく、もう一回お昼ねするね。
起きたら、またおしゃべりしよう。」
「ええ、もちろん。」
やさしい風の中で、
梅の花はそっとゆれ、
リュウは、またすやすやと眠りはじめました。
ぽかぽかの春の昼下がり。
梅の花と子犬だけが知っている、
小さな小さなひみつのおしゃべり。

